最近読んだ本 その5

気付いたら18冊も溜まってたのであっさりメモしておきます。

確か年末のシンガポール旅行のときに読んだ本。成田で買ったんじゃなかったかな。僕にはあんまり面白くなかった。同じく昨年末に読んだ「獄中記」(ASIN:4000228706)がやたら面白かったので期待していただけにとっても残念じゃなかった慚愧に堪えません。

なんか最近の佐藤優は獄中で研究した本の消化試合というかそんな感じの本ばかり出しているんじゃないかという気がする。だから対談や雑誌連載のまとめの本ばかり出てくるんじゃないか。「獄中記」ではとても新鮮に思えた思想の現実へのアプリケーションが、この本ではやたら陳腐なものに見えてしまう。

たぶん、ひとつには対談相手の魚住の知識量が、明らかに佐藤のそれに比べて見劣りしてしまっていて、更にその主張というか発言のベースにあるものがものすごく陳腐な左巻きなところから出ていることも原因のひとつなんだろう。

となんか酷評してしまったけれどまあ読んでる間は面白い本です。でもそれだけというかあまり応用が効かないどん詰まり感があって読後の印象はあまり良くないというか。たぶん佐藤優の本は今後買わないことになりそうな予感。



ニヒリズムの宰相小泉純一郎論 (PHP新書)

ニヒリズムの宰相小泉純一郎論 (PHP新書)

某新古書量販店にて105円で購入。著者はまともな保守の論客ということでちょっと期待して読んでみた。

まあ内容はなんというか著者あとがきにもある通り、気軽な聞き書きって感じ(著者は「講壇」ならぬ「講談政治学」と表現しています)。小泉政権の特徴をざっと振り返るには良い本じゃないでしょうか。

僕は恐ろしいことに例の郵政民営化選挙まで政治に興味をほとんど持たなかったので、同時代に進行していたことの背景と意味を簡単に整理できて助かりました。小泉の政治手法が「刹那的な政治」と表現されていることなど、僕にとってはあまり違和感ない内容になっております。



憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)

憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)

激しくおすすめ。憲法について良くわかってなかったので(今でもわかってませんけど)どこかでおすすめされていたのを見て購入。大変面白い本。

憲法改正、特に9条をどうするかについてがテーマなんですが、そのアプローチの方法が独特というか大変興味深い。テーマを直接扱わずに、民主主義、立憲主義、平和主義から説き起こすという見方によっては非常に迂遠な方法をとってます。

そのせいか、僕には本書の結論であるところの、憲法は準則ではなく原理であるから改正は行わず解釈の変更を許していこう、という論理はいまいち腑に落ちなかった。たぶん僕がこの方面に土地勘がないことが理由と思われます。要再読。

とはいえ、その道中の民主主義、立憲主義、平和主義に関する丁寧な議論は非常に刺激に満ちております。この方面に興味のある方は是非どうぞ。巻末の文献解題も必見です。



勘定奉行 荻原重秀の生涯 ―新井白石が嫉妬した天才経済官僚 (集英社新書)

勘定奉行 荻原重秀の生涯 ―新井白石が嫉妬した天才経済官僚 (集英社新書)

おすすめ。以前bewaadさんが紹介されていたのを見て購入。だから読んだのはたぶん4月頃でしょう。

この方面にはまったく疎い僕ですが大変興味深く読めました。ものすごい量の文献を元にとてもわかりやすく書かれておりおすすめです。

しかしあの時代に裏付けが信用のみの管理通貨の概念を理解していた荻原重秀という人はすごい。未だに金本位制への回帰とか言ってる人がいますからねえ。南無南無。



サラ金崩壊―グレーゾーン金利撤廃をめぐる300日戦争

サラ金崩壊―グレーゾーン金利撤廃をめぐる300日戦争

おすすめ。これも以前以前bewaadさんが紹介されていたのを見て購入。やはり4月くらいに読んでたはず。

金利規制に至るまでの官僚、政治家、業界などの駆け引きの裏側が非常に丁寧に描かれており大変興味深い。綿密な取材もさることながら、これだけややこしい話をわかりやすく書ける著者の筆力には感動しました。

現在はまさにタイトル通り、そして金融庁官僚の目論見通り、外資は撤退・大手は業務縮小・中小は廃業と、サラ金業が崩壊しつつある過程なわけで、そういう意味でも大変面白く読めました。

もっとも、サラ金業界が崩壊したことによって利用者側にどのような影響があるのか、については今はまだ判断できないと思っております。個人的には、銀行などのローンが代替として出てこない限り、選択肢の減少はそれだけで良くないと考えているわけですが、実際はどうなんでしょうねえ。



日本国の原則―自由と民主主義を問い直す

日本国の原則―自由と民主主義を問い直す

激しくおすすめ。これはつい最近読んだもの。個人的な興味の対象のど真ん中にはまりました。これは面白いです。

時間軸では明治から現在まで、話題としては政治・思想・経済と、ものすごく幅広い題材を扱ってます。そのせいか少しまとまりに欠けるように僕には思われるところもあったのですが(例えば少子化の章とか。ちょっと唐突な印象があります)、しかしこれは本書の価値を損ねるものではまったくありません。

まともな保守主義古典的自由主義と背反するものではなく、むしろ両立することが望ましい、ということがわかって個人的にはとても勇気付けられました。時間を見つけて再読したいと思っております。って全然紹介になってませんかそうですか。




と、例によって長くなってしまったので続きはまた今度にします。次回は岸信介特集の続き(たぶんこれで最後)と、引き続いて宮沢喜一特集をお送りする予定。いつになるかわかりませんが。ではごきげんよう