最近読んだ本 その1 昭和天皇編(2)

ちょっとたまり過ぎたのと例によって内容忘れちゃったので簡単に。主に昨年読んだ本をほぼ読んだ順にご紹介。

ちなみに昭和天皇については未だにはまっていて、あと数冊読んだらいったん終わりそうなふいんきなぜか変換できない)です。といいつつ今は西園寺公望にはまってたりして【終わりが見えないsvnseeds】。



秩父宮―昭和天皇弟宮の生涯 (中公文庫)

秩父宮―昭和天皇弟宮の生涯 (中公文庫)

激しくおすすめ。特に2・26で秩父宮がどう関わっていたかを知りたくて読んだ本。これは力作です。著者は秩父宮はシロという立場。これには異論があってしかるべきだろうけれども真相は闇の中でしょうなあ。



高松宮と海軍 (中公文庫)

高松宮と海軍 (中公文庫)

おすすめ。それじゃもう一人の弟宮ということで。ほとんど高松宮日記の紹介なのでこれを読むと高松宮日記全8巻も読まざるべからずという気持になります。実際近所の古本屋で見つけたので買ってしまいました(笑)【いつ読むとはsvnseeds】。付録の次室士官心得抄も面白い。エリートって大変だねえ。



重臣たちの昭和史 (上) (文春文庫)

重臣たちの昭和史 (上) (文春文庫)

重臣たちの昭和史 (下) (文春文庫)

重臣たちの昭和史 (下) (文春文庫)

激しくおすすめ。僕が読んだのは単行本ですが。著者は「西園寺公と政局」の原田熊雄の女婿。「西園寺公と政局」を読む心の準備(笑)として読みました。

いやーこれは面白いですよ。絶版なのは許せない。西園寺公と原田、木戸、そして近衛の関係がわかって大変面白いです。これを知ってるかどうかで昭和戦前史の読み方ってだいぶ変わると思うんだけど、結構書いてないんだよなあ。

随所に挿入される著者による木戸幸一へのインタビューも大変面白いです。僕はやっぱり木戸は嫌いだなあ。ほとんど他人事な感じがします。

それにしても昔の本(といっても昭和56年のものだけど)はちゃんと索引があって偉いなあ。最近は編集者が仕事してないんですかね?読者が期待してないと思ってるのかなあ。南無南無。



昭和史の怪物たち (文春新書)

昭和史の怪物たち (文春新書)

おすすめ。「重臣たちの昭和史」で宇垣一成って面白いなと思って手にした本。森恪、久原房之助宇垣一成の3人にフォーカスしてわりとあっさり記述してあります。

あっさりしすぎてて僕の理解がおよんでない感じ。ちょっと読むのが早すぎたようなのであとでもう一度読み返すつもりなり。ちょうど今西園寺公経由で原敬とか山県有朋とかの関係を読んでいるのでそろそろ頃合な気がしてます。昭和史って読む順番大事だよねえ。



東條英機と天皇の時代 (ちくま文庫)

東條英機と天皇の時代 (ちくま文庫)

激しくおすすめ。「天皇」ってところに惹かれて読んだんだけどほとんど東條英機の話。この保坂って人、前はもう読まないって書いたけど、上の秩父宮の本もそうだけどこの時代のこと書かせると偏りがなくて良い感じな気がしてきた。

ただ最後の東條の強制された死に際して「洗脳」された、ってオチはどうかなあ。別の解釈もあり得るというかどうもここは納得がいかないまくり。どうやら安保世代なのに昭和天皇大好き、という著者のねじれが無理やりこの着地点を見出したように思える。これはいずれ考えてみたい課題(かも)。



昭和天皇と戦争―皇室の伝統と戦時下の政治・軍事戦略

昭和天皇と戦争―皇室の伝統と戦時下の政治・軍事戦略

おすすめ。ただし後に述べるビックスの本の解毒剤として。

どうも今回昭和天皇関係の本は読む順番が前後しちゃったというか、あれこれ読み進めるうちにうまくはまってないことに後からあとから気付く次第で、ちょっとフラストレーションを感じました。やっぱり資料が次から次へと新しく発掘される分野なんで、素直に古いものから新しいものへと読まないとダメですね。ひと段落したらおすすめの順番をまとめるつもりなり【いつになるかはsvnseeds】。

この本もまさにそんなうちのひとつで、ビックスの「昭和天皇」を読んだ後でないとほとんど読む意味ありません。昭和天皇の思想に与えた影響を大化の改新にまで遡って解いているわけですが、事情がわかってないとなんでこんなこと詳しく書いてるわけ?と眠くなること請け合いであります。

とはいえ、偏った立場から書かれた本(お気付きでしょうがビックスの本がまさにそれです)の影響を有効に解毒するには無くてはならない研究と思います。まあ普通は読まなくても良いような気もしますけど。



歴史のなかの天皇 (岩波新書)

歴史のなかの天皇 (岩波新書)

激しくおすすめ。上の本で大化の改新まで遡ったので、ついでに歴代天皇の歴史を知ろうと読んだ本。弥生時代から近代まで、世界の中の日本の天皇について語られておりそのスケールには圧倒されました。このあたりまったく不案内なので【日本史知らずのsvnseeds】また読み返したい本です。



昭和天皇とその時代

昭和天皇とその時代

激しくおすすめ。これは読まざるべからずです。

記述が時系列でない点で評価が分かれるかもしれないけれど、今のところ、昭和天皇関係でいったらこの本が一番偏りなくバランスがとれた記述であると思ってます。



昭和天皇二つの「独白録」 (NHKスペシャルセレクション)

昭和天皇二つの「独白録」 (NHKスペシャルセレクション)

激しくおすすめ。これも読まざるべからず。

このNHKの取材によって、「昭和天皇独白録」(asin:4167198037)が東京裁判に向け作成されたものが明らかになったわけです。マッカーサーが大統領選への手土産として短期間での日本統治成功を望んでいた、というあたりは後の昭和戦後史を考えるとぞっとするものがあります。



昭和天皇の終戦史 (岩波新書)

昭和天皇の終戦史 (岩波新書)

個人的にはまったくおすすめできないというか「これはひどい」タグが付くくらい。この後紹介するビックスの本(この著者が監修か・・・)と同様、昭和天皇の「戦争責任」を断罪するために都合よく論旨を組み立てているようにしか見えず、その記述のあまりの偏りに眩暈を覚えるほど。

一例として、前半やたらと近衛文麿が持ち上げられているわけですが(「保守勢力のなかで最もリアルな政治感覚を持っていた近衛」(p.61)だってさ!)、その理由が、どう読んでも近衛は昭和天皇は戦後退位すべきと考えていたという一点にしかなさそうなところでげんなりさせられます。

僕はこういう風に歴史を読むことはしたくないな。



昭和史の論点 (文春新書)

昭和史の論点 (文春新書)

おすすめ。ちょっと息抜きのつもりで読んだもの。ほぼ保守系の論客の和気藹々とした座談会といった風で良くも悪くも落ち着いて読める、かな。色々面白い論点が出ていたように思うので後で読み返してみると面白いかも。

この中では坂本多加雄だけその著書を読んだことがなかったのだけれど、こんなに保守より(というか非・サヨク的、表現難しいな)な人だとは思わなかった。収穫なり。



昭和天皇(上) (講談社学術文庫)

昭和天皇(上) (講談社学術文庫)

昭和天皇(下) (講談社学術文庫)

昭和天皇(下) (講談社学術文庫)

はい来ました。個人的にはまったくおすすめしないどころか「これはひどい」タグ付けまくりな感じの本ですが、読むなら最初の頃に読むことをおすすめします。ちなみに僕はハードカバーで読みました。

何がひどいってとにかく昭和天皇には戦争責任がこんなにありますはい!というのをこれでもかと主張するためだけに書かれたとしか思えないところ。これは歴史の本でなく思想の本として扱うべきでしょう。

更にひどいのは、昭和天皇だけでなく、この本に出てくる人間はみんな、山本五十六も米内も東條もマッカーサー吉田茂も、思慮が足りず自分の保身だけを考えている愚か者のトントンチキとして描かれているところ。お前は何者だよビックスよ。神か。馬鹿者め。

と読んでいてあまりに頭に来たのでおかしなところをいちいち挙げて反論しようかと思ったのだけど一生かかりそうなのでやめ【諦め良すぎるsvnseeds】。訳におかしいところがあるとのことだし、この本を読んだ後は必ず前出の「昭和天皇と戦争」を読むべきです。あといちいち反論している本として「ゆがめられた昭和天皇像―欧米と日本の誤解と誤訳」(asin:456203954X)があるわけですが、僕はちょっと読んだだけで通読はしてないのでこれはご紹介のみ。

って僕は何も昭和天皇には「戦争責任」がまったくありません、とは考えてませんよ。でも「戦争責任」をちゃんと定義せず、当時の制約条件も考えず、現在の価値観で当時の人間を断罪しまくるような記述にはもう断固反対せざるべからずですよ。

当時の人間の「戦争責任」を立証したいのであれば、ビックスや先に挙げた吉田裕のようなナイーブなやり方じゃダメだと思うわけですよ。ってこれは半分は自分への戒めとして。まあそういう意味では読む価値あるかな。



ということで疲れたので今日はこの辺で。現況は昭和天皇関係が既読9冊+積読5冊くらい。西園寺公の伝記を3つ読んだあと積読を消化して、その後いったん戦前昭和史概観モノに戻って、その後日記系の一次資料を読んで行きたいと思っております【あと2年かかるかsvnseeds】。「これ嫁」とか言うのがあったら是非お知らせいただけると幸い至極に存じます。ではごきげんよう