最近読んだ本 岸信介特集 その2

昨日の続き。


満州と自民党 (新潮新書)

満州と自民党 (新潮新書)

割と期待して読んだんだけどちょっと期待はずれだったかなあ。2時間くらいで読めちゃった。タイトルは「満州」と「自民党」なんだけど、2/3は「満州」(というか満鉄)の話。岸信介は後半になってやっと登場する。「自民党」の話は岸が保守合同したってだけかな。

この本の内容を一言でいうと、満鉄で培われた計画経済が戦後の日本で大きな成果を収めた、そこには岸など満州人脈の繋がりがあった、ってところか。岸信介関連の本は大抵内政と外交にfocusしているので、経済成長における岸の貢献がメインになっているのは珍しいように思う。

でもなあ・・・。要するにこの史観って、通産省が日本の高度成長をリードしたっていう、例の野口某の55年体制1940年体制*1経済がどうしたって話や、(「巨魁―岸信介研究」のあとがきで猪瀬直樹も引用していたけど)チャーマーズ・ジョンソンなどの日本は特別だとする修正主義者たちの話になっちゃうんだよなあ。僕はこれに与する者ではないのでこの点要調査。


「昭和」をつくった男―石原莞爾、北一輝、そして岸信介

「昭和」をつくった男―石原莞爾、北一輝、そして岸信介

こちらもちょっと期待外れ。やはり字が大きいのでこれも通勤時間とランチタイムで読んでしまった。実質2時間くらいなのでコストパフォーマンス悪すぎです。買う本は選ばないとなあ。

この本でも岸が出てくるのは最後の1/4くらいからで、上の本と同じく経済成長への貢献が話の主軸。岸については新しい情報はそんなに無かったなあ。一方前半は石原莞爾北一輝など興味深い人物についての記述になっているのだけれど、なんというかエピソードが並んでいるだけで掘りが浅い感じがしてしまう。この時代に詳しくない人がざっと概観するには良いのかもしれないけれど、たぶんもっと良い本があるんだろうなと思ってしまうというか。

面白いのは、この著者の吉田茂に対する評価が大変低いこと。単に英語ができる米国に阿るだけの男、って感じのようだ。そんなことないと思うんだけどなあ。


「昭和の怪物」岸信介の真実 (WAC BUNKO)

「昭和の怪物」岸信介の真実 (WAC BUNKO)

おすすめ。アレな感じの出版社(失礼)から出ているのでもっと右巻きな内容かと思ったら全然まとも。昨日ご紹介した原彬久教授の本と内容は重複しちゃってるんですがこちらもおすすめです。原教授の本が文献をベースにした記述とすると、こちらの本は逸話中心、って感じ。


あーまた長くなったので続きはまた今度。

*1:Fellow Travelerさん、PPKさんご指摘ありがとうございました!