量的緩和解除を行うべきでない7つの理由について。

消費者物価0・5%上昇、量的緩和解除に追い風」だそうで。ふーん。

よく指摘されていることだとは思うけどいくつか言いたいことがある。結論から言うと、今このタイミングで量的緩和を解除するなんてことはどう考えても適切な金融政策から逸脱していると思われる。日銀はまた失敗を繰り返す可能性が高い。

1. エネルギーを除いたコア指標(米国と同じ規準)ではもっと低い上昇率でしかない
ドラさんによると0.1%だそうな。この4ヶ月間、確かにCPIプラスはプラスだけど、こんな数字で政策変更を決定してしまうのは凄すぎる。
【追記】実際にここ2年間CPIがどう推移したのかは、矢野さんによる素晴らしいエントリをご参照のこと。

2. CPIの上方バイアスを考慮すると依然デフレである可能性が高い
いや「実はみんなが思ってたよりもCPIの上方バイアスは小さかったんでーす」って話もあるのは知ってますけどね。でも誰も上方バイアスが無いとは言ってない。やはり十分な糊代が必要。

3. このままCPIプラスが継続するとは限らない
デフレ期待はせいぜいようやく反転の兆しが見えてきたかどうか、というところ。これだけ長い間デフレが続いたのだから、インフレ期待が十分に定着するにはそれなりの時間が必要のはず。
余計なところでリスクをとらずに(だいたい(cloudyさんも書いてるけど)そのリスクを引き受けるのは日銀ではなく国民だし)、もう安心といえるまでは政策変更は行うべきではない。

4. マイナスの実質金利をしばらく維持するのは異常な政策ではなく、むしろ不況から脱出するにあたって必要な要件となる
FRBは過去に何度か実質金利をマイナスに保っていたことがある。ディスインフレ懸念があった2003年以降、ついこないだまでも短期の実質金利はマイナスだった。これだけデフレが続いてきた日本において、今このタイミングでマイナスの実質金利を心配する理由は見当たらない(それにまだ実際にマイナスになったかどうかすら定かではない!)。

5. 資産価格を金融政策の指標とすべきではない
株価や地価がちっと上がったくらいでバブルだ、引き締めだ、となるのは笑止千万。経済が上向けばそれに先立って資産価格が上昇するのは当然。「正しい価格」なんて誰もわからない以上、これら資産価格は金融政策の指標とはなり得ないのはバーナンキの年来の主張もご参考。てゆーかバブル崩壊から教訓を学ぼうよ。

6. このタイミングでの量的緩和解除は、今後日銀を二重に苦しめる可能性がある
日銀は量的緩和の解除を緩和から中立への変更としか考えていないようだけど、市場からすれば当然、ただの引き締め方向への変更としか見ていないわけだ。
この点で、今後またデフレに戻った場合、日銀は

 a. 景気判断を(2000年に続きまたもや)誤ったこと

に加え、

 b. 今後も、少しの景気回復・デフレ脱却の兆しがあれば、すぐに政策を引き締めへ転換するとの市場の期待を強化し、その結果デフレ期待をより強固にしてしまう

点で、政治的にも取り得る政策の種類・有効性にしても、今以上に難しい立場へ追い込まれることになる。変なところで背水の陣を布かんでもよろしい。

7. 今ここで量的緩和解除を行わなくても、日銀のcredibilityは損なわれない
むしろ「一度やると言ったことはどんなことがあっても必ずやる」という態度の方が中央銀行として相応しくない態度だろう。時間整合性も大事だけど、もっと大事なのは「正しい政策を行うこと」なのは明らかだ。
なんつうか(「独立性」もそうだけど)「時間整合性」ってタームを勘違いしているとしか思えない。間違った政策をそれと認め撤回することがcredibilityを損なうわけがないではないか。

まあアレだ、要するに皆さん就職・転職はお早めに、ってこった。あーあ。