最近読んだ本 その3

また溜まっちゃった。しかしつくづく最近本読む暇ないなあ。なんでだろ【日頃の行いsvnseeds】。青年老い易く壮年更に老い易く中年ますます老い易く老年に至っては最初から(定義により)老いているという罠。而して学成り難しっていうかほとんど無理。得心とは遠きにありて思うもの也や。

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

おすすめ。でも激しくではない。昨年末に本屋で山積みになっていたので購入。急いで原書買わなくて良かったなあ。わはは。

正直、期待してたほど面白くはなかった。なんといっても長すぎで重複も多い。特に最初のモンタナの章。読むの止めようかと思いましたよええ。それになんやかや言って結局環境問題の話に落ち着かせようという持っていき方が激しくアレだ。前作のときも感じたけれど、この人なんというかまとめ方というか風呂敷の畳み方が強引なんだよなあ。

ただ、これも前作と同様、挙げられている個々の事例は文句なく面白い。それにこれら事例に限って言えば、確かに環境問題は重要な役割を果たしたと言えるわけで、まあやっぱり多少強引なところもあるけども、非常に興味深く読むことができた。

個人的に高く評価したいのは著者の企業行動に対する理解というか態度というか立場というか。結局環境問題にほとんどすべての問題を帰着させてはいても、彼の立場はいわゆる熱心に環境保護論を訴えるアレな人々とは決定的に異なっている。つまり、環境問題と企業に関する典型的な主張であるところの、企業はそもそも存在そのものが搾取のためにある悪の権化であり、自然環境を守るためには規制を強化して何がなんでも企業を従わせるべきだ、という立場は採っていない。こうした態度は以下のような記述に要約されているように思う(下巻308ページ)。

読者のなかには、人々に害を及ぼす企業の慣行に対して、わたしが最終的な責任を一般市民に負わせたことに、失望したり憤ったりする向きもあるだろう。わたしはさらに、企業が健全な環境対策を採ることによって生じる付加的な経費を、通常の価格構成要素のひとつとして、一般市民が負担するべきだとも思っている。この考え方は、企業が利益のあるなしにかかわらず高潔な規範に従うべきだという社会倫理を無視しているように見えるかもしれない。わたしは、人類の歴史の全工程において、人が血縁や地縁を持たない他人と遭遇する政治的に複雑なすべての人間社会では、道徳的原理の強制が必要とされるというまさにその理由から、政府による規制が生まれたのだと考えたい。道徳的原理を錦の御旗にするのは、高潔な行動を引き出すために必要な第一歩ではあるが、それだけではじゅうぶんとは言えない。

要するに、ここに現われているのは、企業と言えども所詮は人間個人やその他生きとし生けるモノすべてを統べるインセンティブに従い行動する主体であって、その行動は倫理的な規範や政府による規制に盲目的に従うものではない、というリアリスト的(または普通の経済学的)な理解なのだ。なんつーかこういう視点ってなんで当たり前に共有できないんでしょうねとすごく不思議。どうなんすかね。ってここが歴史と政治と倫理と哲学と経済とその他諸々、つまり人間そのものが抱える諸問題が交差するクリティカルなポイントなのだな。しょうがないか。南無南無。

その他、下巻11章で紹介されているドミニカの政治家、バラゲールの思想というか生き方にはとても興味をそそられた。日本語または英語で伝記があれば読んでみたい。スペイン語なんか読めないからなあ。

あと、日本が今あるようなコンセンサス重視の社会になったのは、主に鎖国によって利用できるリソースの限界に関する期待の形成と合意が容易だったからではないか、と思ったりもした(下巻第9章の記述による)。フリーライダーの存在が許されない社会とでもいうか。このへん拡大解釈すると、グローバリズム(米国主導の歪んだ理解によるそれではなく)の推進は、究極的には諸々の問題を解決するための糸口のように改めて思う。

翻訳は上等。索引と参考文献もちゃんと付いてます(笑)。特に参考文献は付加的な情報があったりして嬉しいオマケ。やっぱ重要ですよこれ。ていうか省くのはかなり許しがたい行為だと思うんだけど一般的にはどうなんでしょうか。

まあなんにせよ環境問題の本だとは全然思ってなかったので激しく肩すかし感が漂ってしまいましたよええ。麦茶だと思って飲んでみたら気の抜けたコーラだったみたいな。わかりにくいですかそうですか。とりあえずバランス取るために未読だったロンボルグ本を読もうかと改めて気が引き締まる思いでいっぱいでございます。ってこれも長いんですよねえ。読むのいつになることやら。