今年の目標は

『年末に「今年の10冊」というエントリを書くこと』なので【小さな目標svnseeds】これからは気の利いたコメントがなんら浮かばない場合でもがんがん読んだ本をメモしまくりますよええ。内容の紹介はちゃんとした誰かにお任せして、気楽に自分の考えたこと/思ったことをメモしようかなと。

ということで年末年始に読んだ本から面白かったものを挙げてみよう。

「コア・テキスト経済史」岡崎哲二ASIN:488384093X
小田中先生が紹介されているのを読んで興味を持っていたところ、たまたま本屋で発見したので購入。

数式からしばし逃避しようと読んでいたところへいきなりソローの成長モデルが出てきたのにはシビレたけど説明がとっても丁寧なので大丈夫。数式出てくるの一部だけだし。それでもどうも、という方には「初歩からの経済数学 第2版」三土修平ASIN:4535550441)を激しくお勧めしておきます。

個人的にはヴェーバーのプロ倫について触れてあったのが大変興味深かった。経済発展と宗教もしくは生活習慣/様式ってのは、社会/文化にしても個人にしても、ものすごーく関係があると思うんだけどなあ。最近のいわゆる「下流社会」に関する話(議論とは言いませんよええ)を見聞するにつけ、「フランクリン自伝」(ASIN:4003230116)をつい思い浮かべてしまうこの頃。この辺はいづれまた調べてみたいところであります。

「新・世界戦争論アメリカは、なぜ戦うのか」ジョージ・フリードマンASIN:4532165490
ちょっとお薦め。オビの「バロンズが最高の1冊に選んだ話題作」というのに惹かれて購入。

いわゆるリアリスト/地政学の見地からの、9.11テロからイラク戦争に至るまでのまとめ。こういうのが好きな人にはとても面白く読めると思う。「地政学的な考え方」のお手本としては良くできてるんじゃないでしょうか。地政学そのものの評価はとりあえず置いといて。

個人的には、まあそういう考え方(の考え方)もアリだよね、くらいに読んでおくのが吉かと。なんつーかキレイ過ぎるんですよ。たとえば例の「悪の枢軸」三ヶ国にしても、この本読むとキチキチにロジカルに詰めて3つに絞ったように見える(265ページ)。でも3つになったのはただの思いつきだ、という話も見聞するし、そちらもまた信憑性があるように思える。

イラク開戦に至るまでもそう。対アルカイダということで論理的にイラク開戦に至った、という筋道がわかりやすく説明されているのだけれど、なんというか論理の枝葉というかオプションが提示されずに、するすると実際起こったことへの説明だけがキレイにまとめられていると、はあそうですか結構ですね旦那、としか思えないというか。これは僕の「地政学」に対する今のところの無理解から来ているのだと思うのだけど。

とは言えひとつの視座から無矛盾ぽく過去に起こった事象を説明しているという面白さはある。これが言えてるかどうかは今後何が起こりそれをどうこの視座から破綻無く説明できるかにかかっているのだろう。

同じテーマをまったく正反対のアプローチ(人物を中心に描く)を用いて書かれた「ウルカヌスの群像―ブッシュ政権イラク戦争」(ASIN:4764105446)との併読を強くお勧めする次第。僕にはこっちの方がしっくり来る。どうすか。

増税が日本を破壊する」菊池英博(ASIN:4478231389
激しくお薦め。これもオビの「借金795兆円にはカラクリがある」や表紙の「本当は財政危機ではないこれだけの理由」という文句に惹かれて購入。

いわゆる「リフレ派」(金融政策重視、インフレ率もしくは物価水準にターゲットを設定し長期国債買い切り)と同じ道具立てを用いながら、財政政策によってデフレ脱却・景気回復を図ることを提唱してます。「失われた15年」は金融政策の失敗の歴史であると同時に、財政政策の失敗の歴史である、ということが良くわかる良書と思います。

Broda & Weinstenの例のHappy News論文、「昭和恐慌の研究」(ASIN:4492371028)、中村先生の「経済失政はなぜ繰り返すのか」(ASIN:4492371036)等が参考文献として挙げられており、ドーマー条件を引いて健全財政の指標は債務の絶対額ではなく名目GDPに対する比率で見るべきであるとし、また政府債務を粗債務の数字で見みたり家計に例えることの愚、「小さな政府」や「構造改革」の根拠の無さ等がわかりやすく説かれています。とりあえず立花隆はまずこれ読めと。

とっても残念なのは金融政策に関する記述がほとんどないというか、あってもネガティブなこと。ゼロ金利解除は失策、とされてるのは良いんですけど、大恐慌や昭和恐慌も財政出動で持ち直した、としたり(「昭和恐慌の研究」を参考文献に挙げておきながら・・・)、73ページではこんな記述も。

金融政策が財政支出よりも効果的だと主張する識者は、マネタリストと呼ばれるグループに多く、彼らは実態経済における企業家心理と企業マインドの重要性に対する認識が乏しいようである。

いや、「企業家心理と企業マインド」に直接働きかけるのが(インフレ率や物価水準の)ターゲットを設定することの意義だし、財政政策よりも金融政策の方が機動性に優れるんですけどね・・・。それに今の時代にマネタリストっていったい。

とツッコミどころはままあるのですが、何より今の小泉政権が目指している方向が完全にまったくのダメダメに誤りである点は良くわかる、という意味で激しくお薦めしたい次第。リフレアレルギーの方にはまず本書をお勧めするといいんじゃないかなあ。で、そのあと「でも金融政策も大事なんだよね」とおもむろに「デフレは終わるのか」(ASIN:4492394362)を薦めると(笑)。わはは。

しかしなんでこういう本が総選挙前に出ないのかなあ。もったいない。

【追記】
この本で提案されている政策(100兆円減税)の評価に関しては僕の能力を超えているので、どなたかやっていただけると嬉しいなあと。都合良すぎですかそうですか。わはは。