郵政事業を民営化しても資金の流れは変わらないってば

しつこいですがもう一度。ってちゃんと書こうと思ってたんだけど先日のエントリへのコメントを転記&補足して(typoは直してw)お茶を濁してしまいます。では。

郵貯等の運用先が主に国債になっているのは、彼らが公務員だからとか「少額貯蓄奨励」策だとかもあるでしょうが、まずは何よりも現状デフレで民間の資金需要がないからであり(だから銀行もがんがん国債買ってますね)、これは民営化したからといって変わるものではありません。この辺の話はid:mojimojiさんがうまくまとめてくださっていますので興味ある方は是非どうぞ。

一方、デフレから脱却できれば、国債が個人に開放されておりまた金利が自由化されている現在、民間で運用できる銀行の方が郵貯よりも高い利回りを提供できるため(できない銀行は預金が集まらないので以下略)、自然と郵貯から民間へ資金が流れると考えられます。

要するに言いたいのは次の3つです。

  1. 資金の流れだとか郵貯の運用だとかを問題にするのであればまずデフレを解消することが重要
  2. デフレが解消しない限り、郵政事業を民営化しようと資金の流れは変わらない
  3. デフレが解消すれば、資金の流れの問題は、郵政事業を民営化せずとも解決可能

また、「資金の流れ問題」以外の問題は、郵政事業を民営化せずとも解決可能だし、そもそもそれら「それ以外の問題」のために今急いで民営化しなくてはいけない理由は見当たらないと思います。それともなんか火急の案件があるんですかね。

と書いておいてなんですが、僕は(前にも書いたように)郵政民営化そのものを否定しているわけではありません。「民でできることは民に」は原則として正しいと思っています。ただ単に、今行われている郵政民営化に関連する議論は、目的に対して間違ったアプローチをしているために問題が多いのではないか、そのような問題を抱えたまま急いで民営化する必要はあるのか、他にやることがあるだろう、というだけです。

蛇足ですが、上述の理由から、財投機関債をどうにかするために郵政事業を民営化せよ、との主張もナンセンスと考えます。暗黙の政府保証に関しては米国の Fannie Maeやその弟分のFreddie Mac等のいわゆるGSEが問題になっているのと同じ構図であり(債券という枠組みを外せばS&Lの話とも共通します)、ほっといて良いとは思ってません。

でもこの問題を解決するために郵政民営化を行う、というのは筋悪すぎ(意味もないし解決もできない)だと思います。そもそも財投機関債を買ってるのって郵貯だけじゃないですからね。それに財投機関債には暗黙の政府保証なんかないかもしれない馬車馬さんによる)、という話もありますし。これは明らかに郵政民営化と切り離して議論すべきものでしょう。どうしてこの文脈で出てくるのか未だによくわからん。ってわからないのはそのロジックじゃなくて何故そんなロジックを信じることができるのか、ですけどw。日本は特別で米帝の手下なんですかね。わはは。

あ、あと今回のこの騒動で思ったのは、とにかくみんな「改革」が大好きなんだなあ、と。僕から見たら、今叫ばれてる「改革」の必要性なんてデフレが終わればほとんどなくなるのに、不思議な話であります。ていうかよくわからん。もう好きにしてくださいって感じです。

といっているだけではアレなので、とにかく日本は今すぐ「改革」が必要だと思っている方々には以下の質問になるべく説得的に答えていただきたいと思う次第です。

  1. 日本が今すぐ「改革」すべきだと考える点を挙げて下さい
  2. それらの点が、過去には問題にならず今現在問題になっている理由を挙げて下さい
  3. それらの「改革」すべき点もしくはその理由を日本と同様に持っている諸外国の例を探して下さい
  4. それら諸外国の現在の(「改革」を行わずして達成している)成長率を確認して下さい
  5. 以上を踏まえて、それら諸外国と日本との根本的な違いを挙げて下さい

ていうか日本がおかしくなったのってデフレの開始と同時期でしょう。で、日本と同じような問題を抱えている国でデフレになってる国って他にないんですよ。もっとシンプルに考えましょうよ。「リフレ政策は政治的に難しい」ってのは、それと同じかそれ以上に政治的に難しそうな郵政民営化を解散してまでやるのを見たら説得力ないですね。「政治」ってのはワイルドカードですかね。目的は手段を正当化しないんだけどな。なんだかなあ。