奇妙な経済学を語る人びと―エコノミストは信用できるか

こっちは文句なしにお勧め。経済学の入門教科書を読み終わったばかりの方、「教科書的」な理論が、どう現実の経済問題に適用出来るかの好例がここにありますよ。
内容としては前著日本の「大停滞」が終わる日を噛み砕いたものと言う感じなんですが、それだけにとどまらず、とても幅広いものとなっています。ここからちょっと目次を引用してみましょう。

  • 第1章 中国は日本経済の脅威なのか
  • 第2章 統合は平和と繁栄をもたらすのか
  • 第3章 市場は暴走するものなのか
  • 第4章 デフレは生活コストを下げるよいものか
  • 第5章 銀行が復活しないと日本経済は再生しないのか
  • 第6章 地方経済は中央からの援助がないから衰退したのか
  • 第7章 人口減少で日本の将来は暗くなるのか
  • 第8章 専業主婦のいる家族が伝統的な家族なのか
  • 終章 経済学を知ろうとしないエコノミストたち
  • おわりに

同様のテーマを扱っている野口旭教授経済学を知らないエコノミストたちは非常に論争的なスタイルだったけど(これはこれで僕は大好きです)、こちらは淡々と、巷間広まっている「デフレ中国原因説」などの「経済学的説明」が何故間違っているか、を解き明かしてくれます。インフレターゲット派の挑発的な論説が鼻につくと言う方(結構多いんですよね・・・)も抵抗なく読めるんじゃないでしょうか。
個人的には7章の人口が減少しても大丈夫、と言う論説が興味深かったですね(以前こんなの書いたことだし)。同じ著者による人口減少の経済学―少子高齢化がニッポンを救う!、ちょっと前まで書店に並んでたように記憶してるんだけど、探し出して読んでみようかな。
それと、ところどころに感じられる著者の飄々としたユーモアが良い感じなんですよ。「おわりに」で明かされる経済学一本槍でない柔軟で真摯な態度も素敵。野口教授の直球勝負とはまた違った魅力があります。ファンになっちゃいました。とにかく必読です。