日銀のリーク問題まとめ

さて、ついでにといってはナニですが、この日銀の「構造問題」(笑)とも言うべきリークについて、目に付いたものをまとめてクリップしてみました。リークに関する記述のみ引用してありますが、もちろん他にも重要且つ興味深い記述がありますので、是非リンク先をご一読いただければと思います。以下なんとなーく時系列になってます。

まずは韓リフ先生のところから。

21日ではお昼(正確な時間はわかりませんが会合終了よりはるか前)にNHKが(私の見たのはブルームバーグHP上)福井総裁が利上げを提案した、という報道に非常に驚きました。これは別エントリーに書いて(やはり間違って削除しましたが)いたことですが、今回は日銀とマスコミが意図的に報道管制を強化していたと思われたところでまたしてもこのような会合内容、しかも総裁提案という常識的には会合決定そのものと予見できるものが報道されたことに驚きを禁じえませんでした。この報道が情報を得てから流れるまでにはもちろんタイムラグが存在していますし、この情報の公知を利用したさまざまなインサイダー情報の利益が考えることができると思います。しかし現在までのところこの点について指摘している大マスコミは存在せず、ネットで日銀・金融関係のマスコミと称する方々のブログでもなんの批判的コメント(コメントすらもたぶんないのでは? 要確認中)もありません。正直、その意識の低さには驚きを禁じえません。

このブログでもとりあげた論点であるいわゆる「リーク問題」に言及した今回のケースでは最初のメディアです。やはり外国メディアでしかこれはとりあげないでしょうね。
【略】
もっとも同誌の記事が海外経済誌の主要論調ではないのも要注意点です。『エコノミスト』誌などは日本銀行の政策に理解を示しているようにも思えます。

日本銀行の政策決定内容の事前リークへの徹底的な批判と、その本質には実質的なデフレターゲットという世界中の中央銀行が採用を思いつきもしない(苦笑)政策目的を「物価安定」として保有していることにあると、もう日本銀行メッタ斬り。

ラスカルさんのところ。銅鑼衣紋さんのコメントも必読。

銅鑼衣紋 『情報統制は本当に厳格だったか深刻な疑問があります。12時40分過ぎにNHKに一報が出ましたが、毎度の容疑者である政府委員は13時過ぎまで部屋を出ていないようです。誰がNHKに議長提案をリークし、銀行がロンバートで資金調達するのを助けたのか?闇は深い・・・』

rascal 『今回は1月の時と違い、前日までの観測報道が殆ど無かったので情報統制が効いているように思ってましたが、その後の報道を見ると、報道機関側の自主規制もあったようですね。昼頃の会議途中での速報が、ご指摘のように銀行のロンバートでの資金調達を助けるために意図的に行われたのだとすると、ちと問題が大きくなりますね。』

ドラめもんさんによる詳しい検証。

えー何でNHKはこの情報を入手したんでしょ。情報源に関して調査していただきたい訳でして、

まあいずれにせよ、量的緩和解除、ゼロ金利解除、追加利上げと3回連続でNHKがリーク報道してるわけでして、どこのおしゃべりが漏らしてるのか存じませんが、いい加減にして頂きたいものです。漏らす方も漏らす方だし、報道する方も報道する方だと。

bewaadさんも取り上げてらっしゃいます。

一般論として言えば、リークとは内部告発系のほか、記者に恩を売るために行われることが多いですが、そのような個人的な思惑で不当な収益機会を作ったりするのは、批判されてしかるべき振る舞いと言わざるを得ません。

上記ブログ等で言及・引用されているFTの記事(原文はこちら)。

残念なことに、日銀の福井俊彦総裁が追加利上げを提案したという情報が、会合開催中にリークされ、報道されてしまった。日銀の政策決定プロセスは極秘のはずだが、このところ数カ月にわたり、こうしたリークが相次いでいる。このような規律のゆるみに加えて、日銀の公式発表が示す方向感は頼りない。おかげで日銀の政策決定はしっかりしたまとまりのないものに見えてしまい、市場の不安感が高まる。

経産省山本幸三副大臣のコメント。リーク問題に限らず日銀メッタ切り。必読です。

また、今回決定の大問題だったのは、審議の途中で「情報のリーク」があったことだ。お昼ごろ一部のマスコミだけに「金利引上げの提案が行われた。」との情報が漏れ、これを受けて国債の大量売却が行われたという。インサイダー取引とも言われかねない事態が生じたのである。

通常こういう場合には、政策変更は取り止めるのだが、日銀は強行した。日銀は、インサイダー取引に甘い習性を持っているのだろうか。

ブルームバーグ日高正裕氏の記事。僕が確認した中では唯一の日本人記者による日銀リーク批判。読み応えがあります。

繰り返された正式決定前のリーク

JPモルガン証券の菅野雅明調査部長は「1月に利上げに反対しておきながら、2月に賛成に回った5人の『指標を丹念に点検して利上げ支持を決めた』という説明は、額面通りには受け入れられない。要は『2月の空気が流れを決めた』ということだろう。何が政策委員会の空気の流れを変えたのか、部外者には分かりようもない。場合によっては、当事者である政策委員もよく分からないのかもしれない」と指摘する。市場にとって分かりにくいのは当然だろう。

右往左往した今回の利上げが残した禍根はこれ以外にもある。利上げの決定が行われる直前、NHKなどが「日銀総裁が利上げを提案」と報道。政策変更が行われた過去の会合ではほぼ毎回、正式発表前に結果がリークされているが、今回も例外ではなかった。菅野氏は「これは許されることなのだろうか。あるいは、毎度のことなので皆あきらめているのだろうか」と疑問を投げかける。

「このようなリークを通じて、一部の市場参加者が利益を得るような環境では、国際的な金融市場が育つ道理がない。安倍晋三首相と福井総裁がお互いに強いリーダーシップを発揮してリークを防止してもらいたい」(菅野氏)。片や支持率の低下で、片や村上ファンド問題で、求心力の低下がささやかれる安倍首相と福井総裁。利上げをめぐる混乱が両者に残した課題は決して小さくない。

そして最後に日本銀行法より、役員及び職員の秘密保持義務とその罰則。

第29条  日本銀行の役員及び職員は、その職務上知ることができた秘密を漏らし、又は盗用してはならない。これらの者がその職を退いた後も、同様とする。

第63条  第29条の規定に違反して秘密を漏らし、又は盗用した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

韓リフ先生もご指摘ですが、実は日銀による重要案件のリークは今に始まったことではないんですよねえ。まさに構造的な問題(笑)と言えるでしょう。日銀には(世間でなく)自身の構造改革(笑)に励んでいただくと同時に、ホネのあるジャーナリストによる問題の徹底的な追及を強く望むところであります【他力本願のsvnseeds】。