最近読んだ本 その6

もう4月ですか。早いなあ。

今日はせっかくの花見日和だというのに朝から仕事でした。明日は雨だし、今年もまともに花見できないのかと思うとちょっと憂鬱。あーあ。

ということで気を取り直して最近読んだ本をご紹介。最近は教科書ばかり読んでいて、結果として何故かフィクションものの読書量が増えたりしてるわけですが【矛盾しとるわsvnseeds】、とりあえず(順番前後しますが)昨日読み終えた本を。


グリーンスパン回顧録

グリーンスパン回顧録

激しくおすすめ。偶然本屋で見かけて購入。色々噂はあったのだけどもう出ているとは全然知らなかった。しかも山形訳!!

600ページを超える大著だけれどもあっという間に読了しました。いやーこれは面白い!個人的な今年のベスト5に入ること間違いないです。難解な言い回しで読みにくいんじゃないか、と心配していたんですがそんなこと全然ありませんでした。というか原著副題の「On Yet Another Hand」が示すとおり、くねくねした言い回しが多数あることはあるのだけれど、非常に読みやすい日本語になっています。山形さんに感謝。

とにかくエピソード満載な本なんですが(何しろフォード時代も入れれば5人の大統領に仕え、議長になってからは5回も大統領選を経験している!)、個人的に気になったものを以下ご紹介。

グリーンスパンは若いころ、ジュリアード音楽院を中退してその後ビッグバンドでテナーを吹き全米をツアーしていたのは割と有名な話。実はアドリブソロが無茶苦茶苦手で、どうしてもソロを吹かなければいけないときは全部譜面に書いてこっそり練習していたらしい(笑)。どんなソロだったのか是非聴いてみたい!

アイン・ランドとの交流に関する話も大変興味深いものがあります。市場に対する信頼はこの辺りから強くなったみたい。ただグリーンスパンは完全なランド主義者にはなりきれなくて、最後には喧嘩別れみたいになってます。山形さんによるランドの詳しい注釈がありがたい。

日本の金融政策については、米国のディスインフレ期と絡めて5ページほど触れられています。FRBは本当に深く日本のデフレを研究したんですねえ。政治的な配慮からか回りくどい表現ながらも、日銀はもっと思い切った行動を取るべきだったとの立場に読めます(いまいちはっきりしないんですけどw)。またこれと関連して、2004年3月の講演が日本で為替介入に対する牽制と取られたことは不可解と言い切っており面白いです(これについては前に書いたここここをご参照)。

政治的なエピソードとしては、共和党支持者のグリーンスパンが、レーガンや両ブッシュよりも民主党クリントンやルービンとより共感的に仕事ができたと語っているところが面白いかな。特にルービンとは世界を確率的に見ている点で発想が似ているらしく、彼らが一緒にことにあたった1995年のメキシコ危機に関する記述は大変興味深いものがあります。

あと、インフレーションターゲットの導入については、やっぱり中央銀行の裁量を狭めるとの見方から懐疑的みたい。でもインフレ期待をアンカーする役割についてはインタゲの重要性を認めていて、更に(日本のように)デフレ期待が定着してしまった場合には強力なツールになり得る、との認識を持っているように読める(523ページ)。この辺の話はもうちょっと読みたいところだけど、バーナンキとのからみもあり政治的に微妙だから難しいんだろうな。

他にも、フォード政権の経済諮問委員会委員長時代の話やらFRB議長就任直後のブラックマンデーの話やらパパ・ブッシュ政権高官との金利をめぐる確執やらロシア危機とLTCM騒ぎやらITバブル崩壊やら911テロやらイラク戦争やら中国経済に関する話やら、もうホントイベント盛り沢山杉でまるでジェットコースターに乗っているようにお話が展開します。訳も最高だし読まざるべからずって感じ。未読の方は今すぐ本屋へGO!