小泉首相の靖国参拝について

靖国についてはややこしいので今まで書くのを避けていたのだけれども、いつまでもひとりで考えていてもしょうがないので書いてしまおう。事実誤認やもっと良い考え方(の考え方)がある場合は是非ご指摘いただきたく。

今回の参拝、記帳もせず本殿にも昇らず、腰が引けていることこの上ない。一方で公用車を使ったあたり、きっとこれがパフォーマンスとして成り立たせるための最大限の譲歩だったのだろうと思われる。結論としては、小泉首相またはその周辺には、よっぽど中国と仲良くなってはいけない何かしらの事情があるに違いないと思わざるを得ない。陰謀論ですかそうですか。

靖国神社とはそもそも何かといった話や、A級戦犯がどうしたとかいう話はややこしいのでここでは置いておく*1。実際にそういった方向へ国内での議論が進むのは中国(と韓国)の思う壺だろうとも思う。考えねばならんのは、小泉首相靖国参拝によって現実的に日本の外交がとり得るオプションが減っていると思われることだ。

中国(と韓国)による靖国参拝に対する非難は内政干渉であり正当性がないのは良く言われるところだ。しかし、どれだけ正当性がない主張だからといって、相手が非難しているその行為を継続的に行って良いかというとそう単純な話ではないだろう。そのような行為は外交的には「あなたのことは無視または限りなく軽視しています」というメッセージを送っていることに他ならない。

相手が小国であり実際に無視しても問題が生じないのであればこれでも良いかもしれない。しかし中国と日本は、今や経済だけを取上げても相互に大きく依存する関係となっている。いかに正当性に欠ける主張であっても、その主張を単に無視することが得策であるとは到底思えない。

ここでもうひとつ考えるべき要素としては、相手を無視している/軽んじているというメッセージを送ることで日本は何を得るのか、という点だろう。巷間よく見かけるのは、中国(と韓国)の要求は一度譲歩すると止め処なく大きくなっていく、だから今ここで断固その要求を拒否するべきである、という主張なのだけれども、これはなんというかあまりに短絡的に過ぎるように思われる。

何故ならば、今まで小泉首相が行ってきた行為は拒否ではなく単なる無視であるからだ。拒否したいのであれば直接的な外交においても国際世論を喚起する方向ででも、正面から相手の非を鳴らした上で参拝するべきだろう。また同様に、参拝を行わないという決定を下すにしても、単なる譲歩と相手に思われないようなやりようはいくらでもあるだろう。

要するに、この冷戦時代のドミノ理論にも似た主張は、首肯できる面もある一方で、これによって現状を肯定することは全くできないと考えざるを得ない。公式なチャネルを通じて抗議せず、単に参拝を繰り返すことは、黙って相手の言い分を飲むのと同等かそれ以上に、相手の要求をエスカレートさせるように思われる。

以上から、僕には小泉首相靖国参拝の目的はただ単に中国(ともしかしたら韓国)を怒らせること以外にないのではないかと思えてならない。一方で、先の総選挙前には参拝を延期したことから見ても、彼の公演の主賓席には少なくとも日本の有権者が座っていないことは確かであると思われる。

純粋に外交的にまずい手を打ち続けてまで、日本は何を手に入れたいのだろうか。靖国がどうしたとかいう以前にそこのところが気になってしょうがない。どうなんですかね。

*1:脚注でさくっと書こうと思っていたのだけど長くなってしまったので、次のエントリをご参照