FTの例のアレ

激しく出遅れてしまいましたが一部で話題のFTのこの記事

The global finance industry will have to wait a little longer to get its hands on that $3,000bn of Japanese savings.

ってところが米をはじめとする国際金融機関の陰謀の素直すぎる真情の吐露なんだそうな。あっはっは。馬鹿馬鹿しい。どうしてこれが陰謀になるのかまったく理解に苦しむところ。無知というには罪が深すぎる。

要するに海外の金融機関から見ると日本の低利で調達できる資本はおいしく見えるってだけなんだけどなあ。安く仕入れて高く売る。ビジネスだったら当たり前の話でしょう。特に米国はディスインフレ懸念で下げすぎた(といっても金融政策的には当面大成功だったわけだけど)金利を徐々に元に戻しつつあるわけで、日本のほぼゼロ金利に甘んじている膨大な資本は宝箱に見えるのは間違いない。

一方で、日本の資本保有者(銀行や郵貯金利が低すぎると嘆いているあなた、あなたですよ)から見れば、こうした海外の金融機関が提供する運用先は有利な機会となるわけです。もちろん為替リスク等はあるけれど、リスクがなければrewardも無いのは当然の話。リスクとりたくなければ黙って国債を買っておけばよろしい。デフレだから金利がゼロでも毎年1〜2%は価値が上がりますよ。

そもそもなんで日本がこれだけ金利が低いかっていうと、誰も借金したいと思ってないからですね。なんで借金したくないかっていうと、借金してまで(設備)投資したい先がないからです。なんで(設備)投資したい先が見つからないかっていうと、売上が伸びないからです。なんで売上が伸びないかっていうと、今より先の方が値段が安いとみんな思っってるからです。

そうして売上が伸びないので企業は苦しくなり、リストラにより家計が苦しくなり、ますます売上は落ち込み、以下繰返し。これを反転したいのであれば、売上が伸び、現金よりも投資が好ましくなり、投資のために借金できる環境に戻せば良い。ようするにリフレ、つまり今より先の方が値段が高いとみんな思うようにすれば良いわけ(8/18追記)です。どうしてこんな簡単なロジックが受け入れられないのだろうか。ナゾが深い。

話を元に戻すと、要するに日本の資本をハゲタカwがかっさらうとかそういう話では全然ないわけです。貸した方も借りる方も両方嬉しい、良い取引になるはずなんだけどそういうのわかんないんだろうな。

ってたぶん郵政事業が本当に民営化されたとしても、いきなり資本が流出(経常収支は減少、資本収支は増大経常収支は増加(黒字拡大)、資本収支は減少(赤字拡大):逆でしたw。Hicksianさんご指摘ありがとうございます。8/18)することはないだろうけど。もしそうだとすると円安になってマネーサプライ増えてデフレ脱却なんだけどなあ。そうか高橋さんはこれを狙ってたのか(嘘)。

って、たぶんここで書いても読まれないだろうし意味もわかってもらえないだろうけど、それを承知で書いてみるテスト。陰謀論をぶつならもうちょっと高度なもので楽しましてもらいたいとの期待を込めつつ。ていうかほんとレベル低すぎです。

追記。このFTの記事を書いたのはこの本の著者です。僕はこの本はまだ読んでいないけれど、RIETIのちょっと前のこれなんか読む限り、現在のデフレ不況に関する認識は信頼できると思っております。