パラディドル・ディドルの応用:(1)シンバルレガート編

はい、ということで激しく唐突ではありますが、これから気が向いたときにジャズドラムの練習方法について書いていきたいと思います。とりあえず中級よりちょい上くらいのレベル感で、普通の教則本にはあんまり書いてないようなことを紹介していくつもりです。例によって色々前提とかすっとばして書くことになると思うんでよくわからん点があればコメント等で突っ込んでいただきたく。よろしくおながいします。

で最初はパラディドル・ディドル(Paradiddle-diddle)のシンバルレガート*1への応用を。というかパラディドル・ディドルを利用してシンバルレガートを矯正しちゃおう、という企画です。これさえ(ちゃんとw)マスターすれば、まあ大抵の曲・テンポにおいてかっこいいレガートが叩けるようになるはず。少なくともbopぽい曲であれば(テンポ280以上の速い曲でない限り)レガートはほぼこれだけで大丈夫です。でははりきっていきましょー。

とりあえずおさらいということで、素のパラディドル・ディドルはこんなの【図1】(以下、キャプションをクリックするとlilypondのソースを表示します)。ひとつ打ちのところが「パ・ラ」に、また二つ打ちが「ディ・ドル」に対応しているのは有名な話。ってそんなの知ったこっちゃないですかそうですか。

Paradiddle-diddle

【図1:パラディドル・ディドル】

で、このパラディドル・ディドルのアタマでハイハットを踏んで、更に右手の二つ打ちの2つめにもアクセントを付けてみたのが次の譜面【図2】。

Paradiddle-diddle with hi-hat and two accents

【図2:パラディドル・ディドル、ハイハットと2つのアクセント付き】

これを、(3/4の1小節を1拍として)テンポ40くらいから練習して、うーんそうだなあ、最終的にはテンポ140くらいまで上げましょうか*2。手は全部スネアを叩きましょう。このとき以下の点にご注意です。

  • 3/4拍子のタイムをキープすること。3連符が出せるメトロノームを使うと良いでしょう。
  • すべての音を「根拠を持って」しっかりと演奏すること。左手やノンアクセントの右手がゴーストノートのようにぼやけてしまっては意味が無いです。最初はしっかり過ぎるくらいしっかり叩くのが吉。
  • とはいえ、アクセントとノンアクセントの差はちゃんと付けること。ドラムにおいては、基本的に音量イコール打面からの距離です。で、距離イコールスピードです。アクセント/ノンアクセントの音を叩くときの、スティックを振り上げた位置に差をつけましょう。
  • とはいえ、アクセントにこだわり過ぎないこと。アクセントを付けるためにタイムが損なわれてしまっては何の意味も無いです。力が入り過ぎないよう(音量は力でなく距離で出します。力は振り下ろし時でなく振り上げ時に使います)、遅くならないよう(距離を埋めるのはスピードで、それも主に振り上げ時のスピードです)、気をつけましょう。
  • ハイハットと右手がしっかり同じタイミングで音が出ていること。右手と左足を「同時に落とす」イメージで演奏すると音が合いやすいです。ちなみにハイハットも立派な楽器なので、ただ踏んでるだけじゃダメです。良い音をしっかり出すこと。

注文多すぎですかそうですか。わはは。ていうか言葉で説明するのって面倒だなあ。

はい、では気を取り直して、【図2】のパターンはそのまま、右手をおもむろにライドシンバルに移してみましょうか【図3】。

Paradiddle-diddle, right hand on ride cymbal

【図3:パラディドル・ディドル、右手がライドシンバル】

おお!感動してもらえました?いや譜面だけじゃわかりづらいんですけど、実際に演奏してみると、これ、【図4】のように聴こえるはずです。

Paradiddle-diddle, right hand on ride cymbal in 4/4

【図4:4拍子でのパラディドル・ディドル】

で、最後に左手を抜くと、めでたくかっこいいシンバルレガートの完成と【図5】。

jazz ride cymbal pattern

【図5:シンバルレガート】

最初のうちは、右手をライドシンバルに持っていったり、左手を抜いてしまったりすると安定しないと思います。以下の点に注意して安定するよう練習しましょう。

  • 3/4拍子のタイムをキープすること。しつこいですかそうですか。4/4拍子で感じるのは最後の最後にとっておきましょう。
  • 同じことですが、ハイハットが小節のアタマであることをキープすること。4/4拍子で感じていてもハイハットはアタマのまま、2つの拍子(3/4と4/4)を同時に感じることができるようになるまで、死ぬほど練習しましょう。ハイハットがウラ(4/4での2・4拍目)になってしまった瞬間にジャズではなくなりますので注意。
  • 右手をライドに持っていったりスネアに戻したりして、同じ感覚で演奏できるようにすること
  • 左手を抜いたり入れたりして、同じ感覚で演奏できるようにすること

注文多すぎですかそうですか。わはは。ていうか(以下略)。

おまけ。これらが一通りできたら、今度はパラディドル・ディドルの2拍目にフラムを混ぜたこんなパターンをやってみましょう【図6】。右手をライドシンバルに持っていったときにどうなるかはもうわかりますよね?

Paradiddle-diddle with flam

【図6:フラム入りパラディドル・ディドル】

はい、ということで今回はこの辺で。質問等あったらお気軽に。次回はシンバルレガートのもうひとつのアプローチについて書く予定ですが正直どうなることやら不安でいっぱいです。ではでは。

*1:ちなみに大きなお世話ですが「シンバルレガート(Cymbal Legato)」というのは和製英語ですね。英語では普通に"jazz ride cymbal pattern"または"the ride cymbal pattern"です。

*2:テンポ140の根拠はさっき自分で試してみてちゃんと叩けた上限ということで(笑)。ちなみにVicFirthのサイトによるとテンポ140は最上級の"DIAMOND"ランクなので、今すぐ叩けなくても落ち込む必要は無いでしょう。しかしテンポ150は無理っぽいなあ。4小節くらいしか続かないや・・・。って考えたらこれテンポ150のレガートですか。このテンポでバウンスできるのはBuddy RichかJoe Morelloくらいじゃないかな。・・・練習しよっと【言うは易しのsvnseeds】。