といいつつ

面白そうなのでmathesisさんから頂いたコメントにはお答えしてみようかな。

>面倒なんで検定してないけど

検定したほうがいいと思いますよ。

チュニジア氏は「統計ってあくまでそういうもんですからね」
なんていってますが、統計の先生が聞いたら困惑するでしょうね

とのことですが。
正直、サンプル数52で決定係数が0.87の相関関係を見て「検定した方が良い」とアドバイスする人が存在することの方が、統計の先生は困惑するのではなかろうかと愚考する次第で御座候。
一応書いておくと、t値18.46でサンプル数52なんで、余裕で帰無仮説を棄却できます。t検定に関してはこちらが良くまとまっているのでご参照。

じゃ次。

ところで、あなたも
「1997年までと1998年以降の断絶に注目。」
と指摘していますが、この件について
こんな情報を拾ってきたので紹介しておきます。

http://www.asvattha.net/soul/index.php?itemid=369

って、これだけじゃmathesisさんが何言いたいか良くわからんのだけど、きっと失業率と自殺率の間には相関関係はないよって言いたいんですよね。ていうか僕はそう思ったわけですが(笑)。

で、とりあえずリンク先のSOUL for SALEさん「自殺の増加」は統計の詐術か?ってエントリ読んでみたんですけど、うーん、難しいなあ。これ、前半と後半で言いたいことが変わってしまっているように僕には読める。どうなんだろ*1

僕なりの理解でまとめてみると、前半は次の問題意識を元に話が進んでいるように読める(タイトルの『「自殺の増加」は統計の詐術か?』もこの線にそったものだろう)。

  • 1997年から1998年の間に、自殺者数が突如増加している
  • この年を境に警察庁統計の採り方に「何か」があったと見るべきではないか

ところが、後半で論証しているのは次のことであって、「1997年から1998年の間に、自殺者数が突如増加している」ことの説明には正直なって無いように僕には読めるわけですよ。

  • 1998年から「原因・動機別自殺者数の推移」に「遺書あり」のケースの数字が併記されることになった
  • これはつまり、1997年以前の「原因・動機」のほとんどは警察側の推定に過ぎないことを示している
  • 一方、1998年以降も、遺書がない多くのケースにおいて「原因・動機」が警察側の推定により分類されていることにはかわりはない
  • よって、2003年の「経済苦による自殺者8897人」という数字が確かなものかどうかははっきりと言えない

どうでしょう。警察が「遺書あり」かどうかを分類してようがどうしようが、1998年に急に自殺者数が増えたことの説明には全然なってないと僕には思えるんですけど。

そもそも「遺書あり」は定義により自殺とみなされるわけで(もちろんいろんなケースがあり得るでしょうが)、それは1997年以前の数字にも当然含まれているわけです。明細を書き出すようになったこととトータルの数字が変化したこととの関係について何かを言いたいのであれば、もっと別の根拠を持ち出さなければならんように僕には思えるわけですよ。つまり、SOUL for SALEさんは自殺原因の分類に警察の推定が入っていることをもってして1998年の自殺者数増加の数字への不審を表明しているわけですが、僕にはそれはかなり弱い根拠に思えるわけです。

って僕は別にSOUL for SALEさんのこのエントリを非難したいわけでは全然無いんですよう。書いてるうちに結論が当初予定していたものと違ってきちゃうことは良くあるし(そもそもそれがわざわざ書いてみる理由だったりするし)。それにここで少なくとも言えること、つまり自殺者の原因・動機のうち約2/3は警察の推定らしいこと、よってその数字を鵜呑みにするのは如何なものかということ、またおまけだけど自殺の原因・動機のデータは「社会」の大きな変動を表すデータになるかもしれないこと、は非常に鋭く且つ面白いポイントだと僕は思っております。

ていうか何が言いたいかと言うとですね、mathesisさんがこのエントリを持ち出すことで何を言いたかったのか僕には全くわからんのですよ。もちろんSOUL for SALEさんのこのエントリは、自殺者の原因・動機における「経済生活苦問題」の数字の信憑性を問うてるわけですが、僕が(ていうかそもそもはゴキブリ28号さんがw)言いたかったことは失業率と自殺率(数)の関係についてです。「経済生活苦問題」は失業をimplyしますが、「健康問題」や「勤務問題」など自殺の他の原因・動機も失業と無関係とは言い切れませんよね。部分的な関係を否定しても全体としての関係は否定できません。

一方で、1998年に自殺率(数)が増えているときには失業率もまた急増しているわけです。要は「経済生活苦問題」の数字の根拠の怪しさをもって失業率と自殺率とは無関係であると結論付けることは厳しいんじゃないかなと。ていうかむしろ関係あると見た方が素直じゃないですかね。

そもそも僕が面白いと思ったのは、「1997年までと1998年以降の断絶」が、つまり自殺率(数)と失業率の大きな上昇が、同じ時期に、過去との関係を保ったまま起こったように見えることだった点なんです。ていうか相関見るってそういうことなわけですが。で、もしも1998年以降、自殺者数の統計だけが水増しされて変化したんであれば、こんなにきれいに回帰直線の上に乗らないですよね(偶然乗る確率は0.05%以下です)。どうですかねその辺。

つーかそもそもmathesisさんがnightさんのところで「1997年以降は失業率が急速に上がっているにもかかわらず自殺率はむしろ下がっています」と書いているのにはなんか根拠あるんでしょうか。もしかしてこれの6ページ目にあるグラフの見た目だけで言ってたりするんでしょうか(先に言っておきますが、もちろん僕はそう思ったわけです)。いや見た目は大事ですけどね。うん。でも検定した方がいいと思いますよ

ってああ長くなってしまった。こんな気合入れて書くつもりなかったんだけどなあ。うう。だんだん酔っ払ってキーボードが打てなくなってきた。また雪降らないかな。では皆さまごきげんよう

*1:そもそも僕が使用している総務省統計局とSOUL for SALEさんが引用している警察庁生活安全局地域課の数字が全然違うのには驚きましたよええ。例えば2003年の自殺者数を挙げると、総務省の方は32,109人、一方警察庁の方では34,427人。何が違うのかなあ。暦年と年度の違いだったりして。