比較優位、金本位制、実質金利

巷間流布する経済に関する妄言の類は畢竟この3つの経済学的概念が正しく理解されていないからではないかと思うに至った次第。
中国デフレ元凶説や中国脅威論は比較優位の概念が理解されていないがための初歩的な勘違い。これ読むあるよろし。元ネタはここ
またいわゆるキャピタルフライトwやヴィクトリアデフレ均衡なんかの妄説は頭の中が金本位制になってるからこそ出てくる発想だろう。金本位制の呪縛が如何に経済の足を引っ張ったかについてはテミンの「大恐慌の教訓」(ASIN:4492370749)に詳しい。いい加減に時代に追いついて欲しい。
そして最も重要な点。金融政策の本質は実質金利の低下にコミットすることで期待実質資本コストを下げ、投資を呼び起こすことにある。苺のコテハン歌舞音曲氏の説明はここ。素晴らしい。僕ファンなんです。
FRBがこの点をちゃんと理解して行動しているのはブラインダー他の「良い政策悪い政策」(ASIN:4822243036)を読めば明らかだ。90年代前半や現在、FRBは意図的に期待実質金利をマイナスに維持しているのだ。
しかるに日本の現況はどうだろう。日銀やその周辺が繰り返す、名目短期金利がゼロ近傍だからもう金融政策の余地は無いという言い訳は、彼らが(期待)実質金利の重要性を理解していない(か、理解していないふりをしている)ことを示している。
例えば前項で取り上げた昨日の日経経済教室では、FOMCが繰り返すconsiderable periodというフレーズだけをもって、FRBと日銀がやってることは同じとしている。しかし上に書いたように日米の期待実質金利はかたやバブル期なみの高金利、かたやマイナスという大きな開きがあるのだ。そもそもその本質において行っていることが違うのに、期間だけ取り出してもしょうがないだろうに。
彼らは何が重要かもわからない馬鹿なのだろうか?それともわかっててやってるのだろうか?いずれにせよ、その職に相応しくない連中が重要なポストに居座っていることは間違いない。
こういう連中を追い出すなり行動を改めさせるなりするためにはやはり一人ひとりがまともな理解をするしかないんだろうか。道は遠いなあ。ていうかたどり着けるんだろうか。「経済学思考の技術」飯田泰之ASIN:4478210489)のような間口の広い良書が広く読まれることを期待したい。