最強CFO列伝 ― 巨大企業を操るもう一人の最高権力者たち

タイトルは大仰だけど、お勧め。
3部構成でなっていて、第1部はCFOと言うポジションが確立した経緯のまとめ。第2部は「スーパーCFO」のまさに列伝。第3部はCFO機能=日本企業に欠けているもの、との位置付けから、今後日本企業が何にチャレンジしていけば良いかを述べる。最後の最後に著者がかかわる青学のMBAプログラムの宣伝が入るのはご愛嬌。
資本主義のあり方を米英の「ミクロ(ドリブンな)資本主義」と、欧州/日本を含むアジアの「マクロ(ドリブンな)資本主義」に分けて考え、永続的なものは前者だとする第3部は面白い。この分け方自体は、ありがちな「社会主義的資本主義」批判の発想と同じなんだけど、その違いがそもそもどこから来ていて、その結果具体的に何がどう違っているのか、論点が整理されているので刺激になる。
例えば、国を挙げての目的関数の違いが金融機関の役割の違いを生み、その結果資本コストが異なってくるため企業の行動も違ったものとなる。こうしてまとめてしまうとふーん、という感じなんだけど、僕にとっては今までばらばらだったものが整理できて読んでて楽しかったです。
で、企業や金融機関のあり方が変わらなければ日本は良くならない、と言う結論は構造改革論者の大喜びしそうな話。僕自身、これについては全く異論はない。だけど注意したいのは、現在のひどい不況の原因は(構造改革論者の言うように)企業や金融機関が変わらなかったから、だけではないし、仮にそうだとしても、政府や日銀が不況を長引かせて企業に改革を迫る、なんてことが許されるはずもない。何をなすべきかを決めるのはあくまで企業(と出資者)である、と言うのがこの本の主張です。勘違いしないで下さいね>構造改革論者の皆様。