Elvin Jones, Jazz Drummer With Coltrane, Dies at 76

ああ。一昨日Elvin Jones is alive!ってのを見付けてほっとしたばっかりだったのに・・・。
僕が最初にElvinの演奏を聴いたのはたぶん中学生のとき。Coltraneの至上の愛だったと思う。何をやっているのかさっぱりわからずタイムすらとれなかったので、この人はただ滅茶苦茶に演奏しているのだろうと思った記憶がある。当時の僕のアイドルはGene Krupaだった。
高校時代はフュージョンにはまって、Steve Gaddが神さまになりDave Wecklが大天使になった。そしてこの2人が影響を受けたドラマー達は自動的に守護天使となり、その中のひとりにElvinがいた。さすがに単に滅茶苦茶やっているのではないらしいことは(なんといっても大天使が影響を受けたのだから)わかってきたのだけれど、でもやっぱりタイムはとれない。きっと表現したいことにテクニックが追いついていない人なのだろう、と思っていた。
大学に入って本格的にジャズを勉強することになり、ビッグバンドをやっていたこともあって今度はBuddy Richが神さまになった。他にはJoe Morello、Shelly Mann、Tony Williams、Roy Haynesなど、端正な演奏をするドラマーが当時のお気に入りだった。一方、ポリリズムの何たるかを理解できるようになったおかげで、Elvinが一体何をやっているのか、ようやく見当がつくようになってきた。けれどやっぱりタイムは全部はとれず、そしてやっぱり彼はそんなに上手じゃないんだと思っていた。
結局僕がElvinの本当の偉大さに気付いたのは大学のバンドを引退してからだ。ろくに練習する時間がなくなってから本当に練習したいことができてしまった。
一般的にElvinの演奏の特徴は、そのポリリズムを多用した複雑さ、それを可能にする彼独特のテクニックとフレーズ、そしてvolcanoともthunderstormとも形容される圧倒的なenergyにある、といわれている。
確かにそれらは非常に重要な特徴であり大きな魅力でもある。でも僕は彼の演奏のもうひとつの側面、あまり一般的には理解されていない側面にも同じく魅了されている。完璧にコントロールされた繊細で美しいシンバルレガート、smooth & crispなブラシワーク、いくつものメロディが同時に進行するきちんと構成されたドラムソロ、といった彼の魅力が紹介される機会は実際あまりないようだ。まあ別にそれはそれでよいとは思うのだけど、あれだけメロディックに演奏することに気を使っていた人が、火山だのなんだのと一般に形容され理解されているのは皮肉なことではある。
晩年のElvinの演奏にはこのもうひとつの側面がより強く出ていたと思う。数年前にブルーノート東京で彼の演奏を初めて間近で聴き、ああこの人は本当に、ドラムで歌を歌っているのだなと心から思った。彼のドラムは彼の歌なのだ。
そして今の僕にはちゃんと、彼の演奏のすべてが彼の歌に聴こえる。素晴らしい歌をたくさんありがとう、Elvin。