Buddy Richは大変かっこいいのだけど、聞いていると疲れてくる。

id:kinaさんの日記から。そうそうそうなんですよねー。
なんでかっていうのを僕なりに考えてみるに、きっとあまりにもタイムがシャープで前のめり過ぎるからだろうと。要はスウィングしすぎwなんですよBuddy Richって。必要以上に目いっぱいGrooveしてる。崖から全身を乗り出して今にも落ちそうな感じだけど下から突風がふきつけているので落ちないで済んでいるような。疲れるわけです。あと実は時々バンドがそんなに上手くなくて、音程あってないのも一因かと(笑)。
こっから飛躍。Grooveと言ったりSwingと言ったりするリズムの感じは、要は「前に進んでいく感じ」なんだけど、それがBuddy Richの場合突出してる。文字通り他の追随を(つまりバンドメンバーですら)許さない。例えばBuddy Rich Bandのベーシストは誰でも、Buddy RichについていってるだけでものすごくGrooveしてる名ベーシストになっちゃってます。このGroove感が一番良くわかるのが「Space Shuttle」と言う名演(このアルバムASIN:B00000IOPK。試聴できるみたい)で、冒頭のトライアングルソロの後、単にレガート叩いてるだけなんだけど本当に加速していっている感じがする。背筋がぞっとします。必聴です。
これだけのGrooveが出るドラマーって他にいないですね。僕はElvin JonesのGrooveも大好きなんだけど、あれは何十年も使っている先祖伝来のナタのような鈍器でごんごん来る感じで、Buddy Richの最新鋭レーザーナイフとはまるで別物です。シャープさで言えばMax RoachですらBuddy Richに追いつけないのは対決モノCD(ASIN:B000068W28)を聴くと明らかで、もうかわいそうになっちゃうぐらい。Gene Krupaとの対決モノ(ASIN:B00000477D)はもっと悲惨で、Krupaファンでもある僕としては涙なしでは聴けません。
一方他の楽器だと、Charlie ParkerClifford BrownOscar PetersonJaco Pastoriusなんかが同じシャープな前のめり感がある。みんな音数が多い人ばっかりだけど、音数が多いってのは1つ1つの音が速いわけです。これは例え大きな音符でもやはり他の人よりも速く弾いて/吹いて/叩いていることになって、それがこの独特の感じに貢献しているわけですな。
実はこういったシャープなごりごり前へ進んでいくGrooveってのは(音数の多さとも相まって)どうも日本では敬遠されるらしく、Buddy Richの日本での評価は不当に低いと思います。まったりとしたマイナーな曲ばっかりが受ける。彼のドラムソロやビッグバンドでの演奏を聴けば、非常に高い音楽性を示しているのは明らかなんだけどなー。Bachの対位法を聴いている感じなんだけど、評論家先生のようなエライ人にはそれがわからんのです。わはは。
しかし面白いのはJN師にドラムを0から仕込まれた僕の後輩の某Kちゃんで、Buddy Richのシャープさが普通と教えられたために他のたるいドラマーを聴くと気持ちが悪いらしく、ある時期寝るときにBuddy Rich BandのCDかけてたそうです。他のCDだと気になって眠れないんだと。